mizuito-tsumugi

〜 日 々 を 織 る 〜

それでもやっぱり失いたくない

あれだけ負の感情をぶつけ合っても

子供の頃に納得いかないことがあっても

イラッとすることが多くても

 

それでも自分にとって

存命する唯一の肉親で家族で

きょうだいがいないから

母とひたすらにぶつかり合ってきた

 

こんなに素の性格を曝け出して

頭で継承が鳴る程に酷い言葉をこれでもかと

後悔するのに口にしてしまったり

それなのに謝ったり何かの手順を踏まなくても

いつのまにか「普通」に戻っていたり

そんな相手は他にいない

今後も絶対に同等になれる人はいない

 

どんなに悲しい言葉を投げ付けても

親だから、怒りながらも赦されてきた

感情的に否定はされても

おそらく過干渉気味ではあったけど

色んなものから護られてきた

 

子供社会は残酷だったから

親には分からなかっただろうし

どうにもできなかったけど

家では基本的に自分を出せた

 

元から自分の感情を、特に嬉しいとか

悔しいとか、表に出すことが苦手で

 

生来のものではなくて

弱味を見せたら終わる小学校時代から培われて

いつのまにか「素の自分」に取り込まれた部分

 

自分の不器用さの反動と不安定さが

家では結構剥き出しだった、若い時

 

親の立場からすると

面倒な子供だと思う

 

大雑把かと思えば急に自己基準で神経質だし

 

ある意味では

母もわたしも外ヅラ大王な似た者同士であり

でも母以上に子供の頃の生き方の名残か

内に内に込めて溜めて、自分の首を絞めて

自分で自分の心を壊す、一種の自傷行為のようなことをする傾向がある違い

 

そこは父にもどっちの祖父母にも似ていないようだから、単純に幼少期に形成され

元々あった資質と兼ねあってこうなったのか

 

 

落ち着いている時に母が言った言葉

 

「ありがとう

   本当に、あなたがいてくれて、良かった

    私の人生で何が良かったって、

    あなたがいてくれたこと

    ほんとうに、ありがとうね」

 

泣いた

 

 

聞いたことのないような弱々しい声で

まるで最期の言葉のように

 

聞いて怖くなった

このまま消えてしまうんじゃないかと

 

今も思い出すだけで涙が止まらない

 

母は私の前に戸籍にはない姉を

出産と同時に亡くしている

 

医者の判断が悪く、近くの大病院に搬送もしてくれなかったため

育ちすぎた胎児が産道で窒息という

帝王切開に切り替えてくれていれば助かっていたかもしれなかった命

 

もっとも、その場合、私がその後に生まれた保証はないけども

 

私の後はもう諦めたのか

そうならざるを得ない状況になったのか

事情は知らない

全く話してくれないし、聞けないが

その後に子供は生まれず、かくて私はひとりっ子となった

 

亡くした姉の後、予定より早く姉と同じ月に生まれた私

 

そのせいか、ずっと重い親の思い

若い時ほど負担にしか感じられない、それ

 

結局は愛憎紙一重

 

今、母に怒鳴って怒ってしまう、その裏には

憎いほどの苛立ちの反動になる対極のものが

自分にもちゃんとあった

 

生まれた時から、マトモな会話も生涯通して1ヶ月分にも満たないんじゃないかという父とは違って、

剥き出しの血を流す心で何十年とぶつかってきた母

 

どんなになったとしても、

まだまだ生きていて欲しい

 

私をほんとうの独りにしないで欲しい

 

なのに

調子の良くない母を相手に勝手に追い詰められ

早く死んでと叫んでしまう自分が心底嫌だ

そう思ってしまう自分を抹殺したい

 

割り切れない

やり切れない

 

 

いっそ一緒に死んでしまいたい、

世の中の介護心中の気持ちが分かるような気がする

 

何も未来を生まなかった私という

代々繋げてきた家系の直系本家を自分を

自分が断絶させること

封建制度はとうに過去の遺物で

現代ではよくあることと理性の自分は言うけど

一族を見てきた記憶と感情の自分は申し訳ないと、何も繋がない自分は何のために生まれて生きているのかと思ってしまう

 

十代の頃から己のレゾンデートルが見出せず

自問自答を繰り返していた不毛さが、

今なお巣食っている

 

あんな会話もなければ良く殴られ蹴られた

口より手が出る不器用な父でも

いとこが結婚した時は

教会もいいな、なんて予定もない娘にご機嫌に語るくらいの夢を持っていた

 

でもバージンロードを一緒に歩いてあげられなかった

たぶん、ある頃からもう諦めていた

 

そうさせたのは、私。

 

良い歳して親に色々ぶつけて言い返して傷付けて

全然親孝行できていない

 

したいのに出来ないのは、老いた親の「異常事態」を結局は受け入れられていないってことだ

 

何て心が狭いんだろう

器が小さいんだろう

 

 

失いたくないのに、相手には逆にしか伝わらない言動で悲しませて絶望させて

 

穏やかに危ういところは軌道修正しながら共生したいのに

 

 

今日はもう涙が止まらない

 

仕事で削り取られた精神が

母の喪失感をリアルに迫らせる

 

泣いて泣いて泣いたら

明日は何とかうまくリセットできるかなぁ